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鳥啼く頃に

短編小説

No.9

「雪が降るまでにって言ったよね」


「雪が降るまでにって言ったよね」
「ごめんって……」

 寝て起きたら雪が降っていた。ちょっと前に近々大寒波が来るって予報を聞いていたから、そろそろ用意しないとな~と思っていた。

「今用意したから許してよ」
「……別に良いけど」

 拗ねている、風に見えるけど、たぶんマジであんまり気にしてないような気がする。それよりかは人生初の大雪のほうが大事だろう。
 空から降る大量の綿雪で、空は真っ白になっていた。

「思ったより冷たくない」
「まあ、一つ一つは小さなものだからね」

 掴まえてみようとするかのように、手を宙に泳がせるけど、綿雪はぶつかってすぐに溶けていく。

「改めて見ると雪って儚いな~。久々にこんなに大きな綿雪みたよ」
「はかない?」
「すぐ消えちゃうってこと」

 手のひらを見つめて雪が消えていくのを確認する。宙にあるうちは白色を輝かせるそれも、地面に落ちればすぐに色を失う。

「雪、か~」
「昨年のはもっと小さかったな~」
「これは大きいんだ?」
「うん、わたゆきって言うんだよ」
「ふーん」

 雪の来る方向を向いて、歌を口ずさむ。邪魔くさくないのかな、と思ったけど、黙って聴いていた。
 一通り歌って満足したらしいので、そっと声をかける。

「邪魔くさくない?」
「あんまり」
「風下向いたほうが歌いやすいと思うよ、こっち」

 腕を引いて体の向きを変えさせた。ちょっとだけ歌って、「確かにそうだね」と小さく笑う。
 う~ん、かっこいいなあ。

「雪、どんなんかわかった?」
「まだ積もるとこ見てない」
「あ~そうだね。積もるかなぁ」

 なんとなく解散の流れになったので家に向かいながら、だらっとしゃべる。

「積もるの、見るぶんには楽しいんだけどね」
「滑るんだっけ」
「うん、中学のとき派手に転んだことあるよ」
「オレの靴は大丈夫かな~」

 マゼンダのマフラーは目にまぶしい。頬に色が照り返して、いつもより血色がよく見える。
 明日目が覚めたら、積もっているだろうか。

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#MYK_IV #日記


二次創作

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