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鳥啼く頃に

短編小説

No.7

墓場の中で


 そうして人類は永遠の眠りについた。二五八九年八月三十日。最後の人類が夢想監視システムに入眠した。
 それから一年後の九月二十九日。とある男が夢想世界の中で自殺した。

 平坦な電子音と空気が抜ける音がする。半透明の材質の天井からは薄暗い明かりがさし込んでいた。柔らかいクッションに身を包まれていることを認識したのとほぼ同時に、そのクッションの姿勢が変化したのを感じた。
『R-0987-6335 覚醒。ただちに再入眠の手続きを開始』
 感情のない音声が響き、再び空気の出入りする音がした。状況を理解するよりも先に、意識が鈍っていく。
 目が覚めたのは病院の中だった。
 医者は単なる夢だろうと断じたが、男は自分の経験が夢だったとは到底思えなかった。

 二五九〇年十月十一日。同じ臨死体験をしたものが出た。それから同じ経験をするものが続出。
 夢想世界は疑惑の中に包まれた。
『我々は夢の中に居て、死ぬと目覚めてしまうのではないか?』

 二六八五年三月二日。夢想世界の最後の住民が死亡した。
 夢想監視システムが起動してから、使用者が覚醒することは一度もなかった。
 地上は花畑に包まれていた。地下にある棺桶型の夢想監視システムは役目を終えて、本物の棺桶となった。

#SF


オリジナル

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