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鳥啼く頃に

短編小説

No.5

誰文2021


「これで満足か?」
 疲れたように吐き出した君に私はむっとなって、実際満足しかけていたことも忘れて言葉を叩きつけた。
「満足させてほしいなんて言ってないけど」
 綺麗に食べ終わったパンケーキと、カップに半分残っている甘い紅茶。テーブルにはかさの減った水の入ったグラスが結露していて、なんとなくそれに刺さってたストローを回してみたりした。
「あーいえばこーいうなお前は」
 向かいに座る君は小さ目なパフェを食べ終えていた。手元には冷めたコーヒーと、砂糖の入ってた細い紙袋がくしゃくしゃになって小皿の上に置かれていた。
「じゃあどういえばいいの」
「言わなくていいんだよ」
 すぐに返された言葉に疑問を持っていると、君は「んー……」と考えているような声を上げながら、手を口元に持って行ったり、コーヒーをスプーンでかき回したりした。
 それから「手、出してよ」と言われたので、流れでなんとなく手を差し出してしまった。抵抗しても良かったのに。
 君は私と手を組んで、それからじっと私の顔を見つめてきた。
 なんだか段々照れてきてしまったので、手を引っ込めて自分の体を抱きしめるように腕を組みなおして、顔も横にそむけて視線を地面に追いやった。
「やっぱりそういう態度とるんだ。可愛げのないやつだなあ」
 笑いながらしゃべる君は、少し楽し気でムカついた。
「うるさいな。わかってるよ」

#誰文 #誰文2021


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