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鳥啼く頃に

短編小説

No.3

逸山法子はSF研を出禁になっているらしい。


 逸山法子はSF研を出禁になっているらしい。
 俺は別にSF研とは何の関わりもないけど、友達がSF研で、たまたまその話を聞いてなんか意外だなと思った。三回生ともなってくると、同級生の名前くらいはうっすら覚えてくる頃合いだったし、逸山法子は一回生の頃からずっと変わらない、よく言えば素朴、悪く言えば地味な女子だった。
 むしろああいう男っ気のない女子の方がSF研では好まれるような偏見があったから、なんで出禁になってんの? て気軽に聞いてみた。
 それが一回生のときになんかやったらしいってことしか部長が教えてくれないんだよ。部長が? 代替わりしてんじゃないの? してるよ。だから部長にしか伝わってない理由らしいんだよな。ふーん。
 大人しそうで地味に見える女子が出禁を食らうなんて、なんか意外だな〜と思った俺は、逸山法子に話しかけてみることにした。
 眼鏡、ひょっとして度入ってない? 伊達眼鏡なの。そーなん? なんで? それは……。
 理由を話したがらなくて話が進まない。仕方ないので直球に近いルートを使うことにした。
 俺の友達からSF好きって聞いたんだけどさ、何が好きなの? SFって思ってもらえるかわかんないけど、フランケンシュタインが一番好きだな。フランケンシュタインってSFなの? あれは最初のSF小説とも言われてるんだよ。へぇ。
 逸山法子は男慣れしてない女だった。ちょっとつつくとすぐに懐いてきて、そもそも三回生になっても友達が少なかったらしい彼女と俺はすぐに仲良くなった。
 逸山法子は一人暮らしをしていた。俺も一人暮らしをしていたからお互い気兼ねせず泊まったり泊まられたりするようになった。別に凄い好きというわけでもなかったが、彼女は居心地の良い女だった。
 ただ、彼女は絶対に眼鏡を外さなかったし、実家の話をしなかった。話を逸らすのが下手で露骨に黙ってしまうから、そのうち話を振ることもなくなったが、眼鏡を外さないのだけは気になった。
 俺だけが彼女の素顔を知らない。なんだか釈然としない気持ちで数週間が過ぎたあの日、俺は彼女が寝ている隙を見て眼鏡を外すことにした。
 なんてことはない寝顔がそこにあった。なんだ、ただの恥ずかしがりだったのか。なんだか拍子抜けする気持ちで彼女の寝顔を見つめていると、彼女が目覚める『音がした』。

「おい、最近逸山さんとよそよそしいけど何かあったん?」
「なんでもない」
「ふうん、お前、出禁の理由見つけるとか言ってなかったっけ?」
「それはたぶん、わかった」
「へえ、なんだったの?」
「……秘密だよ」

#ホラー


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