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鳥啼く頃に

短編小説

No.2

指輪の使い方


 二人で一緒にお店に行って、おそろいの指輪を買ったときはそれはもう柄にもなくちょっとはしゃいじゃったんだよね。
 もうにっこにこの笑顔でそれとなく指輪をアピールしてしまったりして、女が指輪をいとしそうにしてたらそういう話題って感じになるわけだから、当然おめでとうなんて声もかけられたのに。
 それなのにあの子といったら、指輪にチェーンを通して、ネックレスにしてつけてたの!
 そりゃあ、恥ずかしいのかもしれないなと思うけどさ、私ばかり薬指に目を向けてしまって、馬鹿みたいじゃないかって思ったわけ。
 それだけでお酒に浸るかって? 仕方ないじゃないの地味に凹むんだからさ!
 え、本人に直接言ったのか? 言えないよつけてくれるだけでも嬉しいんだもん。
 私たちここじゃ普通に言えるけど、別に普段はオープンにしてるわけでもないからさ……だからこそ指輪ってその、そういう感じね?
 私はオープンにしたいのか? わかんない。ただ好きな人がおそろいのものをつけてくれると嬉しいじゃん?
 じゃあネックレスでもいいじゃんって……いやね、私はここに、ここにつけてるの! それなのにあの子はそうじゃないってことがなんかつらいわけで……。
 あ、ちょっとごめん、LINE。え、来るって。ここに。
 もうちょっとで来るって。うわーなんか気まずいな。いい具合にごまかしといてよ。
 帰らないのかって、いや、それは確かにそうなんだけど……でもやっぱりあの子の顔が見れるのは嬉しいんだよね。
 惚気じゃない! 惚気じゃないから!
 もーなんかそういわれると調子狂っちゃうな。やっぱり次で最後にする。あの子の顔が見れれば今日のところはいいしさ。
 カルーアミルクちょうだい。
 ん、デザート的な感じでね。最後に飲むとちょうどいいんだよね。
 マスターさんのほうこそ、奥さんと仲どんな感じなの? あ、やっぱりいいんだ? だよね~、こういう仕事長々続けられてるひとなら、そら家族仲もバランスいいんじゃないかって気がするよ。 
 そういえばちょっと前お店空けてたよね。なんの都合だったんです? 旅行? 京都に?
 いいな~、私も京都行きたい。あの子と泊りがけでどっかいけたら楽しいだろうなあ。でも今こんなご時世だしなあ。
 京都旅行のときはまだそんなひどくなかったのか。あ、でもやっぱりガラガラだったんだ。いいなー行きたいなー。
 あ、カルーアミルク。ありがとうございます。
 カルーアミルクって本当するっと飲めることない? アルコールの感じしないよね。学生時代初めて飲んだときにさ、こんなにアルコールっけのないお酒があるんだって最初に感動したお酒なんだよね。
 最近はアルコールっけのないお酒多いよね。ストゼロ? ストゼロはな~、なんか全力でごまかしてる感じはするけど美味しくないじゃん? 美味しいお酒の話をしたいの。贅沢違うわ。
 そんなこと言うと来なくなっちゃうぞ~。コンビニの安酒でも十分美味しいもん。あ、やっぱり来てほしい? そっか~。しょうがないな~。
 大丈夫だよ。ちゃんとまた来るよ。
 ん、誰か来た? あ……。
 昨日ぶりだね。
 あれ指輪、どうしたの。え、つけてる? 薬指に? だって昨日昼に会ったときはネックレスにしてたじゃ……あ、いや別に気にしてたわけじゃなくて。
 ここに来るときは薬指にするって思ってたんだ? ふーん、そうかあ。
 そっかあ。
 にやけてない、にやけてないよ!
 あーでも気分いいからもう一杯くらい飲んでから帰ることにする!
 次は何飲もうかな。

#ネックレス #お店 #笑顔


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