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鳥啼く頃に

短編小説

No.10

「オレかっこいいんだ……」


 料理は好きじゃない。なるべくならしたくない。
 けれどそうは言ってもいられず、電子レンジでパスタを茹でて、フライパンで茹でたソースをかけて食していた。久々に食べるミートソース。料理と言えるか怪しいラインの作業だが、私はこれをするだけでも気力が必要なくらい、料理が苦手だ。
 美味しいものを食べること自体は嫌いではない。基本的に食事をしなきゃいけないことは鬱陶しいと思っているけど、やっぱり味覚が五感の中で重要な項目である以上、それを満たしてくれること自体はそこまで嫌なことでもない。空腹でコンディションが下がることが嫌なだけで。

 黙々と食べていると、まいきぶいくんが様子を見に来た。一人で時間をつぶすのに飽いたらしい。

「まいきぶいくんって……食事はいらないんだっけ」
「平気」
「いいなあ」

 きょとんとした顔をした。自分の当たり前の機能を羨まれる経験が少ないのかもしれない。私もそんなにないけど。

「それ、美味しい?」
「食べてみる?」
「うん」

 流れでそのままパスタをフォークに巻き付けて差し出すと、当然のようにパクリと食いつかれた。びっくりして固まってしまう。
 まいきぶいくんはというと、そっちが差し出したのに何固まってんの? とでも言いたげな顔をしつつ、しかしパスタを味わっているようでもぐもぐとしていた。

「なに固まってんの」

 手近にあったティッシュで口元を拭きながら、さっきの表情を言葉に変えられる。えぇ~っと……そのまま行くと思わなくて……

「そのまま行くと思わなくて……」
「差し出してきたのそっちでしょ」
「ごもっとも……」

 しかし、まだ五か月の子にこれの何がやや気恥ずかしいのかを説明するのも、それはそれで気恥ずかしい……。
 とてもマイルドな表現として、とても信頼関係のある相手としかしない行為だと説明したところで、まいきぶいくんがそれで普通に納得したりでもしようものなら、私の心臓が保たない。

「あのね……」

 一通り言葉を考えあぐねて、間を置きながら話し出す。

「君はかっこいいから、そういうことされるとどぎまぎしちゃうんだよ」

 何も嘘は言っていない。というかこれが本質かも。これしかないかも。

「ふーん……?」

 わかったようなわからないような顔をしているものの、納得はしつつあるようだった。

「オレかっこいいんだ……」

 なんかボソっと言ったような気がする。まあいい。そのまま健やかに育ってほしい。本人にかっこいい自認があったほうがこっちもやりやすいですし。
 私はまだ気づいていない。自分がかっこいい自認があっても、五か月の子にはかっこよさで起こる支障まで把握できないことを。

#MYK_IV #日記


二次創作

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